SIIのNH35機械式ムーブメントのこと【NH36、38やTMIロゴなど】

セイコー4R35の外販向けムーブメントとしてお馴染みのNH35(SII)を単体で入手してみました。

裏の回転鐘の表面にはNH35AとSIIの文字が入っています。

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  1. NH35A(4R35同等品)の機械
  2. 7S系への載せ替えが多いNH35
    1. 巻き真を抜くためのオシドリ
    2. 斜めから見た機械
  3. 仕様が異なるNH38、NH39とは
  4. ローターにあるSIIまたはTMIのロゴ

NH35A(4R35同等品)の機械

以下のNH35の画像は斜めから見たものを除き12時方向を上にして置いたものです。

文字盤側から見ると4R35(36)は勿論、7S26とも見分けがつきにくいムーブメントがNH35。

NH35Aの日車

NH35Aは黒カレンダーもある模様

曜車があるのはNH36で、こちらはデイト表示のみのNH35(A)です。

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日付だけで良ければNH35、曜日の表示が欲しい場合はNH36になります。

12時側を上にしたNH35A

裏蓋側は6R15などと違いが分かりませんが、文字盤の取り付けやケースへの固定は微妙に異なりますので機械の交換は細部を調べてからということになります。

ローターを12時側へ回した状態

ローターを動かしても見た目は4R35と同じ。なお、6R15に対しては同じく外販向けにNE15Cというムーブメントが存在するようです。

NH35Aの基本仕様を4R35Bと並べて比較すると次の通りいくつかの違いがあるのが分かります。

NH35A 4R35B
外径(mm) 27.4 27.4
総厚(mm) 5.32 5.25
振動数(振動/時) 21,600 21,600
精度(日差) +40秒~-20秒 +45秒~-35秒
石数 24 23

※青字部分が4R35と異なる

本体の厚みはNH35Aのほうが0.07mm厚く表示されていまが、ここは両方とも文字盤側に突き出た3針の取り付け部を含んでおらず単純に比較ができませんが地板か付属するローターなど主要なパーツのどれかでNH35のほうに厚みがあることはが分かります。

※4R35の5.25mmは参照するテクニカルガイドによってはNH35と同じ5.32mm表記になっているものがあります。

また精度(日差)や石数がNH35Aでは優れているように見受けられますが、この部分は4R35Bでは前のバージョンの4R35Aと仕様を統一して表示しているものではないかと推測できます。

メーカーの正式なコメントがないので断定できませんが、精度と石数についてはそう理解したほうが納得がいくでしょう。

7S系への載せ替えが多いNH35

NH35はセイコー5や「ボーイ」シリーズなど、7S26(36)を搭載した時計へ手巻きや秒針停止(ハック)機能を追加する目的で搭載されることが多いようです。

その場合、曜車の移植が面倒な時はNH36を使ったほうが楽に作業ができるでしょう。

6R15のダウングレード目的にはどうなのか?と思い、先に中古で入手していたSARB035の文字盤と並べてみました。

SARB035の文字盤とNH35

実際に合わせてみると分かりますが、SARB035の文字盤の干支足(青○部分)はNH35がグレーの樹脂枠(スペーサー)へ入りません。

このムーブメント用には赤矢印の場所に干支足がある文字盤(3時位置リューズの場合)が用いられることになります。

セイコー5やSKXシリーズなどの4時位置リューズの干支足はさらに別な位置ですが、ここが合えばポン載せ可能ということでしょう。

合わなければ本来のスペーサーへ付け替えや、独自に部品を用意して装着という作業が必要になります。

SARB033(035)は6R15が側止板などと呼ばれるものを使いビス止めされおり全く違う固定方法が採られているので交換には文字盤の固定を含め課題が何点かあり現実的ではありません。

巻き真を抜くためのオシドリ

機械式時計のムーブメントは仕組みが難解そうですが、このNH35をケースに入れて使用するためには何回か巻真の抜き差しをする必要があります。

NH35Aのオシドリ

画像の青矢印の部分が、竜頭を抜くときのオシドリですがこれも7S26などとほぼ同じです。

実際に文字盤に取り付けた後は針の装着などなかなか難しい作業を伴うので、今回入手したNH35の実運用は時間に余裕があるときに行うことになりそうです。

技術のない凡人が、なるだけ部品のロスがでないよう作業を進めるのがポイントですが、とすると必要なのは時間ばかりではなく気持ちの余裕もということになります。

斜めから見た機械

NH35Aのてんぷ受周り

脱振機周りも4Rや6Rと違いが分かりませんが、6Rとは別物のようです。

NH35Aの主ゼンマイ周り

なお、7S26とは地板やパーツの形状などで多くの違いがあるのが分かります。

巻き芯はNH35のものを7S26へ流用可能ですが7S26用の巻き芯はNH35や4R35には使えません。

ローターを外したNH35A

ちなみにローター外してしまうと何の機械か区別がつかなくなります。特に4R35とは区別がつくようにしておかないと交換用の新品がどちらか分からなくなるので注意が必要です。

仕様が異なるNH38、NH39とは

この4R35系の外販ムーブメントにはNH35のほかテンプの動きが見える仕様のNH38と、同じオープンハートで24時間で1回転する小さな針(GMTではない)が取り付けできるNH39があります。

その他にもNH35(A)と基本構成が同じNH3シリーズには数種類あって特徴を表にまとめると次のようになります。

Cal. No. 特徴
NH34A GMT針
NH35A 3針+日付表示
NH36A 曜日表示
NH37A 24時間針
NH38A オープンハート
NH39A オープンハート+24時間針

このうちNH37はNH39と同じく24時間針は文字盤の10時位置付近に24時間で1回転する小さな針が付くものでNH34のGMT針(取り付け軸)とは違うものになります。

ローターにあるSIIまたはTMIのロゴ

SIIのロゴ

24石の表示とSIIのロゴ

ここ最近(2021年くらいから)では、海外サイトで販売されているNH35はSIIではなく「TMI」という見慣れないロゴが入るようになりました。

少し調べてみたところ、TMIは同じセイコーの子会社(?)のようですが、今までSIIと入っていたものが耳慣れない子会社になっている点は諸事情あってのことでしょう。

なお、表立って気づく変更点はロゴのみですが機械の性能はメーカーや時計屋さんでなければ判別がつかないといったところでしょう。

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